筋書き通りのメモリーズ

アルバム、シングル単位で好きだの嫌いだのを言いたい放題します。

GARNET CROW 1st Album 『first soundscope ~水のない晴れた海へ~』

2001年1月31日発売

 

 『first kaleidscope ~君の家に着くまでずっと走ってゆく~』発売後の2000年3月29日、「Mysterious Eyes」と「君の家に着くまでずっと走ってゆく」の2枚のシングルを同時に発売し、メジャーデビューするGARNET CROW。とりわけ「Mysterious Eyes」は『名探偵コナン』のタイアップとしてそれなりに名を売りながらその後もインディーズ曲のシングルカットや新曲をリリースし続け、2000年の間に6枚ものシングルを発売。「Rhythm」の発売中止などがあったもののその集大成として年明けにこのアルバムがリリースされました。

その6枚のシングル全曲をはじめ、発売中止の憂き目に遭った「Rhythm」などのアルバム曲、あと「夏の幻」のシングルバージョンのアレンジがパクリとか言われたから作り直したであろう別バージョンがシークレットトラック(アルバムパッケージのスリーブにだけ記載されてなくて中のブックレットとかにはちゃんとバージョン名だのクレジットだのが載ってる)として収録されたこのアルバム。アコギやパーカッションを多用しながらシンセサイザーなどもふんだんに使っており「ネオアコ」だなんだと言われた時期のアルバムですせいぜいネオアコっぽいのは3rdか4thくらいまでな気はする、この辺ですでにかなりポップだしつぎの5thは……

 

1. 水のない晴れた海へ ★★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:Miguel Sá Pessoa)

トップバッターにしてアルバムのサブタイトルとなっている曲はパーカッション、アコギ、ピアノとアコースティックな雰囲気で静かに始まって頭サビに入ると一転、4つ打ちの打ち込みドラムがタイトに刻まれる緊迫感のあるサウンドに。人魚姫をモチーフとしている歌詞ですが、この時期は特に「死」だとか「孤独」だとかそういうことがテーマの歌詞が多い! 高音部ばかりを奏でるピアノもキラキラとかいうよりもう亡骸を葬送する音の様ですよね。んで、それがエンディングに向かうにつれだんだんと激しくなっていくのがもう「どうぞこちらの世界へ!!!」って感じで、そんでさらにメジャー最初のアルバムの1曲目にこの絶望的な曲をもってくるってのがすごい。さんざん盛り上がった後にコーラス(このコーラスがめちゃくちゃ凝ってる)以外フェードアウトさせてコーラスだけでぷっつり終わるのなんか事切れてるとしか言いようがない。この世界観の作りこみはすごいわ……。

 

2. 君の家に着くまでずっと走ってゆく ★★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:Miguel Sá Pessoa、古井弘人)

2ndシングル

タイトル表記ではわかりにくいですが、シングルバージョンでこっちのバージョンはたまに出てくるミゲルさんメイン(ていうか1曲目は珍しく古井さんアレンジ参加してない)のアレンジでもったりしたリズムが印象的な穏やかな雰囲気になってます。コード進行とかはそこまで変わってないんですが大サビ部分、もとはEm7→F#m7→G→Aで循環していたところをこのバージョンはEm7→F#m7→G→D→A/C#→Bm→A→G→D/F#→Em7…になっていたりちょこちょこ違うんで面白い。その大サビからラスサビに行かずイントロと同じフレーズでフェードアウトしていくところも大きな違い。どっちかというとこっちのバージョンのが好きです。

 

3. 夏の幻 ★★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

5thシングル

この曲はまず転調が自由すぎる。Dm→B♭→F→Cって普通にFかな~って聴いてたら、突然のA♭。このA♭、トニックなんで単にF→A♭で短3度動いただけなんですけど転調はやすぎやろ!! ついでに言うと二度とキーはFに戻りません、使い捨てが豪快すぎる。AメロからBメロへはFm→(Key=D)G→A→Bmとかいう力業が光る転調、BメロからサビへはG→D→A→(Key=E♭)E♭という唐突すぎる半音上昇。次から次へと平然と転調するもんだから理解が追い付かん。間奏~2BメロもE♭からD♭に行ってまたDに戻すというやりたい放題感、好きだよこういうの。そっからサビへはG→D→A→(Key=E♭)B♭で普通に上がったと思ったらその次がEで「やっぱりそこは上げるのね…」という。進行はハチャメチャですがメロディは普通に殺傷能力抜群でつよい。歌詞もこの曲では七さんとしては「生命」は「ゆめ」であるし、「命」は「まぼろし」であるんです。せつない。

 

4. 二人のロケット ★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

3rdシングル (別アレンジ)

インディーズアルバムからそのままシングルカットしたものをメジャーのアルバムにもそのまま収録するのはまずいと思ったのかドラムとベースが生演奏に差し替えられすごく生き生きしたサウンドになってます、こっちのが好き。といってもやっぱりメロディやらなんやらめちゃくちゃ平坦だしCDで聴くんじゃなくてライブ向き。

 

5. 巡り来る春に ★★★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

希望を抱きそうなタイトルのこの曲ですがそんなものはどこ吹く風。無機質な打ち込みのドラムなんかとともにあきらめにも似た感情が歌われます。「何も手にせずに生まれてきたから このまま世界に終わりを告げたい」だとか暗い、暗すぎる。一聴してピンと来なくてもあとからじわじわ来るタイプの曲。実際割と最近まで空気曲だった、個人的には。

 

6. HAPPY DAYS? ★★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

中盤にいたり、ここでやっと箸休め的な曲。「君」のいる今の幸せをしっかりとかみしめているようなふんわりした内容の曲。なんだかんだ二人の日常を切り取ったようなこんな曲も結構多いです。あとこの曲に限ったことではないんですがコーラスワークが細かすぎる。ハモリだけじゃなくてコーラスのみのフレーズも何声にも重なっててこれそうとう手間かかってんだろうなと。何がすごいってこの曲特別凝ったわけでなく全体的にこの調子という。

 

7. Mysterious Eyes ★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

1stシングル

メジャーデビューのシングル2枚同時発売のうちの一つですが、実質的にこっちがデビュー曲として扱われることが非常に多いです。そういうこともあって代表曲の一つ。バンド全体に漂う暗い雰囲気はこの曲では鳴りを潜めていて終始明るめな余所行きな曲。曲としては非常にシンプルで、大体AとDとEとFm#のコードを行き来してるだけって感じなんですが、実は3回あるサビの終わり方が全部違ってます。こういうところに変化があると聴いていても飽きが来にくくていいですね。

 

8. Rhythm ★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

渋いエレキで幕開ける曲はやはりというかこのアルバムっぽいアコギやシンセ主体のサウンド。ロックよりのミドルテンポなんですがBPM135でなんとこの曲がアルバム内最速。GARNET CROWBPMが100から120前後の曲が非常に多いイメージなんですがそれでもこの天井の低さは驚きですね。一応最速に恥じないかっこいい曲に仕上がってます。

 

9. Holding you, and swinging ★★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

ハーフタイムシャッフルのけだるいR&B風味の曲。サビでは特にファルセットが多用されコーラスも異常に複雑な基本的にゆりっぺの声を堪能するための曲。コーラスワークに目が行き過ぎて歌詞が入ってこない、七さんごめん。

 

10. flying ★★★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

6thシングル

アルバム先行シングルとしては最後発。GARNET CROWパブリックイメージド真ん中な身もふたもない言い方をすれば人が死ぬ系の曲。相手への依存性を存分に感じる曲ですね。サビは高音を多用するメロディになってるんですがこの曲は「Holding you, and swinging」と違って全編通して地声での歌唱。そのことで余計魂の叫びというか捻り出すような情を感じる仕上がり。うーんよくできてるわ……。サウンドとしては後期でやるようなロックな感じ、Aメロのコード進行が何やら変な動きをしてますが自然に流れてるのはさすがですね、クラシックだったら怒られますよこんなの(だがそれがいい)。

 

11. 千以上の言葉を並べても… ★★★★☆

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

4thシングル

このアルバムの収録シングルどころか全シングル並べても圧倒的な地味さを誇る名曲。なんせ2フレーズ繰り返すだけで終わりますからね。ブリッジとかラスサビとかいう概念がない。アレンジも極力さっぱりというか最低限の音しか入ってない、というか入れてないって感じです。2番のAメロだけ唐突に4つ打ちになったり2番サビに関しては音が多めだったりで変化はあるので退屈ではないですね。むしろこのアルバムのシングルでは一番好きです(後述のアレを除く)。二人の別れが描かれていますが、あきらめというか妙にあっけらかんとして前向きな風に見えます。しかし公園で髪を切るというのは普通なことなのだろうか……。

 

12. wonder land ★★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

イントロのアコギリフが印象的な軽快なポップス。一応アルバムの最終曲ではありますがまだ曲が続くので終わりますよ~感はなし。随所に入るファルセットがやはり好き。特に最後、転調してからの「嘘に歪んでしまった愛も」の「に」が最高。サビの構成がなかなか面白くて流れに乗って普通に進行してるかと思ったら後半で急にロックなメロディになります。いやいやなかなかその転換は意外というか斬新。

 

13. 夏の幻 (secret arrange ver.) ★★★★★

(作詞:AZUKI七/作曲:中村由利/編曲:古井弘人)

5thシングル (別アレンジ)

パクリと騒がれたので別アレンジ作りました的なやつ。ちょっといじったとかそういうレベルではなく1から作り直されてます。で、このアレンジが本当にいい。この時期にはほとんどなかったがっつりとしたバンドサウンドでアコギよりもエレキが目立ってます。曲構成に関してはイントロと間奏のコード進行がF→Dm→B♭→Cと明るいコード進行に変わってます。逆にせつないのよこれが……。個人的にはこのアレンジは完全体という印象で、切ない歌詞がより一層引き立つというか涙腺を的確に攻撃してくる。GARNET CROWの中でもトップクラスで好きな曲。

 

個人的評価 ★★★☆

明るい曲もそこそこ入っているのになんでかどんよりした雰囲気、アルバム通してのサウンドもかっちりと迷いがない。散々各所で言われていることではありますが、1stにしては方向性が定まりすぎているというかすでに何年も活動してましたけど?みたいな雰囲気さえある1枚。隙がないと言いますか、全部とりあえずパーフェクトに作ったんであとは好きか嫌いかで判断してくれというような言った作品かな。相対的な言い方ではありますが確かにいいアルバムだけどGARNET CROWにはもっといいアルバムがいくらでもあるよね、という印象を抱きます。「夏の幻」シングルバージョン入れんでもよかったんでは?とか。しっかり向き合うとやっぱいいなって思うんですけど。

 

first soundscope?水のない晴れた海へ?

first soundscope?水のない晴れた海へ?